18日、中国東部・安徽省合肥市の安徽中医薬大学で、新型コロナウイルスによる肺炎の感染患者に漢方薬を処方する薬剤師。（合肥＝新華社記者/白斌）

　【新華社武漢2月20日】新型コロナウイルスによる肺炎の感染者1701人が17日に新たに退院し、中国での退院患者の合計は同ウイルスの流行以来、1万2千人を超えた。退院患者らの共通点で見過ごすことができないのは、中医学（TCM、中国伝統医学）が治療に果たしている力だ。

　今月14日、新型肺炎発生の「震源地」である武漢でスポーツセンターを病院に改修する第1段階が開始された。この病院は同市初のTCMに特化した仮設病院で、第2段階が終了次第、計800人の患者が治療を受けることになっている。

　5省20カ所のTCM病院に所属する209人の医師と看護師から成る医療チームは、中国工程院院士（アカデミー会員）の張伯礼（ちょう・はくれい）氏の指導の下、この病院でTCMの臨床治療と研究を行っている。

　推奨されているTCM治療計画に含まれるのは、発熱、激しい咳、食欲不振、吐き気、嘔吐（おうと）、下痢、息切れ、疲労を対象とした漢方薬の処方だ。

　14日、中国中部・湖北省武漢市の患者を治療するためにTCM療法を主に取り入れている江夏区の仮設病院で、患者の情報をチェックする医療従事者ら。（武漢＝新華社記者/程敏）

　中国国家衛生健康委員会が発表した新型肺炎に関する診断治療計画の最新版には、TCM治療について詳しく書かれた章が設けられている。

　武漢市新型コロナウイルスによる肺炎の感染予防・抑制対策指揮部（対策本部）は、症状が軽い患者については、TCMと西洋医学の統合治療を受けさせ、指定病院でTCM治療の効果を観察するよう指示している。

　統計によると、湖北省の新型肺炎対応を支援するためにこれまでに全国のTCM病院・医療施設から2220人の医療従事者が派遣されている。同省では感染患者の75％以上がTCM治療を受けており、これ以外の地域ではその割合は90％以上に及ぶ。

　湖北省でTCMと西洋医学の統合治療を受けた後に退院した患者は、2月6日だけで23人に上る。

　張氏は、症状が軽い患者はTCM治療を受けた後、明らかに病状が改善し、重症患者の場合は、TCM治療によって滲出（しんしゅつ）性の胸水症状が緩和、血中酸素飽和度が安定し、呼吸補助と抗生物質の使用頻度も減ったとしている。

　18日、中国東部・江西省南昌市の江西伝統医学大学の付属病院で、新型コロナウイルスの感染患者の脈を診る医療従事者。（南昌＝新華社記者/胡晨歓）

　TCMの歴史をひもとけば、過去何千年にもわたってTCMによって天然痘などの感染症が治癒に至った証拠が数々そろっている。最近の例は2003年に流行した重症急性呼吸器症候群（SARS）に対処したときだ。TCMは、SARS患者の治療と回復に時宜を得て効果的な解決策を提供した。

　TCMの専門家、熊継柏（ゆう・けいはく）氏は次のように述べている。「西洋医学と比較すると、TCMは、患者一人ずつにそれぞれの条件に合わせて非常に多様な処方箋を出せる」。

　中国科学院に所属し、国家中医薬管理局のTCM治療グループの代表を務める仝小林（どう・しょうりん）氏は、TCMの特徴として、カッピング（吸い玉）、鍼（はり）、経絡などをマッサージする刮痧（かっさ）など、薬物を使用しない療法を挙げ、TCMは退院した患者の体調を効果的に回復する助けになると述べた。

来源：新华社2020年2月20日